〝隠し〟木の家?見せ方控えめ、居心地格別 / 京都府・E様邸
「風通しも、日当たりも譲れない」
[奥さま]以前はこの近くの賃貸マンションに住んでいました。見た目はいいけれど、風通しも日当たりも悪い。せっかく家を建てるなら、通風や採光は譲れないと考えました。まずは情報収集をと、木の家と地域でインターネット検索をかけると、エビナ製材が上位に。電話をかけて海老名さんと会うことになりました。
「実家の離れが山小屋風の木の家で」
[ご主人]私の父はものをつくるのが好きで。実家は長野の田舎で土地が広いものですから庭に離れを、山小屋のような木の家を建てたんです。自ら山で木を切るところから始めて、私も手伝わされた(笑)。その離れが気に入っていて自分も建てるなら木の家、イチからつくれる注文住宅が良いなと。
小さなモダンハウスを叶えたE様ご夫婦。「最初カントリー調になるのかと思っていたけど、まったく違う仕上がりに。むしろ今のほうが好き」と満足されているそう
2階家事室。脚付洗面台は奥さまがインターネットで購入。左の棚はエビナ製材作
アンティーク調のリボンウォールミラーもネットで購入。ポップな壁紙はデンマークの「rice」のもの。遊びに来た女友だちにも好評
洗面台のエレガントな雰囲気に似合うラバトリーレバー。左右の持ち手部分は陶器で、その色と質感がアクセントに
準防火地域の制限で梁を表に出せなかった分、階段には木を贅沢に使って
細いのに存在感があるアイアンの手すりは、京都・山科のロートアイアン工房「Ferraio」にオーダー。職人さんが鉄を鍛えて一本一本手作り
踏み板はタモ集成材。準防火地域の耐火構造のルールに従い、厚みは60mmと通常の倍! 堅い・重い・切れないを扱いきった大工さんの労作
あたたかみのある木とクールなアイアンは好対照&好相性。階段下のろうそくランプも併せてトータルコーディネート
キッチンはサンワカンパニーにて購入。硬質感のあるステンレスカウンターが、空間の印象を引き締める効果も。リビングの壁や天井は珪藻土。カーテンは京都・西院にある専門店「CB SOWM」でチョイス。クッションは「Anthropology」等で購入。
2人で並んで立っても余裕のスペースを確保。背面の食器棚はエビナ製材作。下段はリビングから見えない高さに
ご夫婦そろってお酒好きとあって、ワイングラスホルダーもあつらえ
キッチン上部、多灯吊りのペンダントライトは清涼感あるシルバーに
セメント風の仕上げが気に入って大阪市内のインテリアショップで購入した掛け時計。
主寝室には奥さまが選んだ、曲線が優美なアイアンフレームのベッドを設置。壁は1面だけ塗装してアクセントに
フレームはざらりとマットな質感。ヘッドボード側の装飾がエレガント
塗装した壁はトーンが低め。壁掛けの間接照明をつけると陰影がきれい
シックなモノトーンのウォークインクローゼット。床は黒いフロアタイル。ミラーはアジア製で、奥さまがネット購入
クローゼット全面に貼った輸入壁紙は、英国の老舗ブランド「GRAHAM&BROWN」のもの。キューブ型の照明もハイセンス
「売り込まれず、『他も見たほうが…』と」
[奥さま]初回は私1人で訪問。お会いした海老名さんはぼそぼそしゃべる人で(笑)、事前に見ていたWebページそのままやんと思いました。次は夫と共に会いにいき、ここに決めて良いよねと。
[ご主人]もともと何かあったときに融通が利く、地元の方に考えていました。エビナ製材の資料を見たりお話をうかがったりする過程で、わがままを聞いてくれそうな印象を持ち、その場で決めました。すると海老名さんのほうが驚かれて「もう少しいろいろ見たほうがいいんじゃないですか」と。ぐいぐい売り込んでこない、誠実さを感じましたね。
「いざ始めてみると制約だらけ! で試行錯誤」
[奥さま]打ち合わせは2週間に1回、共働きで2人ともなかなか時間が取れないので、毎回夜に、2時間ほどかけて。密度が高かったです。
[ご主人]土地面積は20坪程度と狭く、準防火地域、斜線制限…と制約条件がいろいろ出てきて、その条件の中で理に適ったものに、梁などは表に出せないけれどなるべく木を活かしてと設計段階で何度も何度も変更を。試行錯誤でだいぶ時間をかけてもらいました。
「狭い部屋は苦手、ドアは少なく開放的に」
[ご主人]希望は開放的な家。我々が持っていた土地は三方がオープンだったので、この土地を活かして風通しや日当たりも確保したいと伝えしました。2人とも学生時代に数年アメリカで暮らした経験からか開放的な空間が好みなんです。あとは自分の書斎、これは狭くても良いから欲しかった。
[奥さま]閉鎖的な部屋がとても苦手なので、一部屋のスペースは広く。キッチンも2人で作業できるよう広々と。それと以前の住まいは収納場所が少なかったので、クローゼットもたっぷりとってと、かなり無理を言いました。
どこかに大理石を入れたかった、という奥さま。結局サンワカンパニーで購入した大理石風タイルを床材として使用
真鍮製、透かし模様をあしらったトイレットペーパーホルダー。ネットで購入
3階トイレにも輸入壁紙を採用。柄入りでも落ち着いた色合いでしっくり
ご主人の書斎。壁と天井は石膏ボードの上にヒノキの板を貼って山小屋風に。この狭さが落ち着き、仕事がはかどるそう
書斎の照明はアウトドアでおなじみのランタンで。ご夫婦共通の趣味は山登りとあって、ウォールフックには登山用のヘルメットもスタンバイ
「フローリングは明るい色合いのタモでナチュラル」
[奥さま]ベースの床材は明るい色調で木目がきれいなタモ。素材を決めるまでは流行りのダークなウォールナットがいいとか、ナラやサクラにしようとか、いろいろ揺れたけれど、最終的にはタモにして気に入っています。1階の水回りだけ杉板にしました。
「インテリアのバランスは、プロの意見を参考に」
[奥さま]打ち合わせには、途中からインテリアコーディネーターさんにも参加していただきました。例えば、ペンダントライトのコードの長さにしても、どのくらいが格好いいか分からない。「あまり短くすると格好悪いですよ」などと、実際にさまざまなケースを見てこられたかたのアドバイスが大変参考になりました。
[ご主人]最初はキッチンの床に6角形のタイルを敷こうと考えたんですね。でもインパクトがありすぎて、負けないようにリビングのフローリングの色を濃くすると、今度はくどい。一箇所個性が強いと全体の兼ね合いが難しいんです。そこは何軒も建てて見てられるプロの意見で、シンプルなものに落ち着いた。それが今は良かったと思っています。
1階に用意された居室。将来手を入れる可能性もあるので現時点はシンプル
2階の浴室とは別に、1階にシャワー室を設置。脱衣所から段差のない造り
浴び心地のいい、シャワー
コンパクトに収めた1階水まわり
3階トイレとはテイストを変えて
アンティーク風仕上げと色が気に入り京都市内のインテリアショップで購入したミニチュアソファ。シルバー仕上げの小鳥と巣はSeriaで一目惚れ
壁一面の収納は容量たっぷり。ドアのころんと丸い握玉は、奥さまが「ZARA HOME」で見つけたもの
アンティークのペンダントライトもネットで購入
「大工さんががんばって、難しい作業をしてくれました」
[ご主人]準防火地域は耐火構造のルールが厳しく、階段の踏み板にしても通常の倍の厚さが必要に。大工さんは非常に重くて堅い板を壁の外側に出して組みあげて、数百箇所あるくぎはすべて外から見えない隠し釘に。非常に難しい作業をしていただきました。
「しっかりこだわれたのは、狭い土地だからこそ」
[ご主人]この家にはそこそこお金をかけたつもりですけど、狭いからかけられた。設計も合理的にいろいろ考えられて、細かい部分までこだわって考え抜くことができたんじゃないかなと。正直、広すぎたら途中でイヤになったかもしれない(笑)。
[奥さま]絶対そう。広かったら予算の限界も近くて、何でもグレードを落とさないといけなくて、こだわれなかった。ポイントで使った輸入壁紙も諦めざるを得なかったと思います。手配や施工に手間取ると海老名さん泣かせの壁紙(笑)…お世話になりました。
「帰宅後の時間を楽しむ、そんな余裕ができました」
[奥さま]以前の住まいだったら、仕事から帰ったらとにかく早く寝たいという感じだったんです。それが今は料理をして、ワインを飲みながらNetflixを見る(笑)。そういう時間を楽しむ余裕ができました。光も風も申し分なくて、前は日当たりが悪くて頭を悩ませていた布団干しも、今は晴れた日に窓際のソファの背にかけておくだけです。
[ご主人]一戸建てなので、マンションと違って隣の人を気にしなくていい。それこそ風通しも良いので、とても爽やかに暮らせています。特に好きな場所はリビングかな。書斎もあるけど、カウンターでちょっとした作業もできるし、ご飯も食べられる。キッチンの使い勝手も良くて、気に入っています。
エントランスには、バラの装飾模様が素敵なガーデンテーブル&チェアが
味のあるひび焼きガラスを用いた、アンティーク調ポーチライト
小窓付き、木目調の断熱玄関ドアにはアイアンワーク風の装飾も
ドアのあしらいとライトに統一感があっておしゃれな印象に
外観はすっきりと。屋根は斜線制限がかかるなか、現在の形に落ち着いたそう
玄関先で「ようこそ」の気持ちをさりげなく伝える、グリーンのディスプレイ
「将来のリフォームも視野に入れて」
[ご主人]家は3軒建てないと満足しないと言われるけれど、大変よくやっていただいて2軒分くらい稼げた気がします。後に両親と同居する可能性もあるので、1階はバリアフリーに改築しやすいように工夫していただいた。将来的なことも意識してもらって満足度は100%です。
「皆さんどうされていますか? と、どんどん質問を」
[奥さま]私たちもそうでしたけど、初めての家づくりだと分からない、気がつかないことが多いんですね。さまざまなケースを知るプロに「普通はどうするんですか、皆さんはどうされるんですか?」などと質問しまくってうまく情報を引き出すと、参考になってさらに良い家がつくれるんじゃないかなと思います。
[ご主人]こういう家がほしいと強い思いがある場合は、仮に値段が少々高くてもわがままを聞いてくれるところが満足するんじゃないかな。我々は思いもあったし条件が厳しかったので、海老名さんにお願いして本当によかったなと思っています。自由度が高いし、厳しい条件でも何とかしてくださるのでオススメです。
ありがとうございました。
(インタビュー:茂内希保子 撮影:江原英男)
この木の家の自然素材
- 玄関[框:ホワイトアッシュ、床:タモフローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉、壁:珪藻土、天井:珪藻土]
- 寝室[床:タモフローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉、壁:珪藻土、天井:珪藻土]
- サニタリールーム[床:杉フローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉、壁:珪藻土〈一部輸入壁紙SOHO〉、天井:珪藻土]
- リビングダイニング[床:タモフローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉、壁:珪藻土、天井:珪藻土]
- キッチン[壁:珪藻土、天井:珪藻土]
- 洗面家事室[壁:珪藻土〈一部輸入壁紙RICE359020〉、天井:珪藻土]
- 寝室[床:タモフローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉、壁:珪藻土〈一部塗装仕上〉、天井:珪藻土]
- 書斎[床:タモフローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉、壁:桧横貼り、天井:桧横貼り]
- ウォークインクロゼット[壁:輸入壁紙Graham&Brown、天井:珪藻土]
- トイレ[壁:壁輸入壁紙VATOS CERAM、天井:珪藻土]