家づくりの条件は平屋・木の家・DIY! 自分たちらしく自然とつながる暮らし / 滋賀県・N様邸
「家を建てるなら、平屋がいい!」
[ご主人]僕らは平屋が第一条件だったんです。子どもが絵に描くような、三角屋根のシンプルな家が良かった。デザイン的にロー&ワイドが好きなのと、年をとったときに2階の活用法があるのかなとも思って。自分が生まれた家も平屋でした。
[奥さま]うちは子どもが一人なので、将来独立すると夫婦だけの家になります。きっと2階にあがるのがおっくうになる、平屋で十分だなと。私も実家は平屋だったし、平屋はかたちがかわいいですよね。
「きっかけは年々傾いてゆく借家でした」
[ご主人]以前は京都市内で、築年数不詳の古い借家に住んでいました。家賃が安く駐車場があるのは良かったけど、なんせ家の中が暗くて。窓が曇りガラスで外が見えないんですよ。しかも家が傾いてきてサッシはちゃんと閉まらず、2階のひと部屋は使えない状態に。
[奥さま]〝ザ・昭和〟の三軒長屋だったんです。隙間がやたら多くて家の中でも外気温と一緒(笑)。傾きもひどくなっていくし、このまま住み続けるわけにはいかない、子どもが小学校に上がる前に、自分たちの家をと夫婦で検討し始めました。
2019年3月、念願の平屋暮らしを始められたN様ご一家
奥さまお気に入りのフレームキッチンは、なんとご主人作! 緑を眺められ、光がたっぷり入る明るい空間も◎
木目が美しい作業台も、ご主人のお手製。さまざまな使い方ができそう
無垢材×黒鉄の異素材が絶妙にマッチ
汚れに強い土間を床に。「夏は足もとが涼しい」と奥さま
オープン棚もご主人がDIY。フレームキッチンとも好相性
置くだけで様になるキッチン家電も
道路側の窓にはウッドブラインドを
電球&ツイストコードはネットで購入
「知人の建築士に依頼したけれど…もうええわ」
[ご主人]まず頭に浮かんだのが、知り合いの1級建築士さん。建てたものが格好いいし相談してみようと。ある程度話が進んで図面もざっと描いてくれたのに、住宅ローンを組む段になって急に「先に土地を決めないと描かん」と言い出さはって。だいぶもめて嫌気がさし、もう家建てるのええわと1年ほったらかしにしました。
[奥さま]でも、いずれは転居しなきゃいけないし、ローンを組むのに年齢的な制限もある。今動かないでどうするの、と。
「ハウスメーカーの平屋、BESSの木の家、どれも違う」
[奥さま]家づくりを再開し、手始めに住宅展示場を見学しました。不動産会社が紹介してくれた大手ハウスメーカーにも行って。
[ご主人]ハウスメーカーも平屋を作っていたけど、プランが決まりきっていたり、やたら高かったり。そのなかでBESSの「程々の家」のデザインは気に入ったんです。当時は平屋のプランがなく、下請けの工務店さんに頼んでみたものの、BESS本社からNGが出て。まあ値段的にはいけるし、BESSに依頼するかと決めかけたんです。でも、よく見ると柱が集成材とかが気になってきて。やっぱり無垢材がいいと考え直しました。
「やっと希望にあう土地を発見! でも周りが…」
[奥さま]家を建てる土地も、自分たちで探しました。値段や広さを考えると京都では絶対無理だろうと、滋賀の湖西エリアで。
[ご主人]妻が京都に通勤するので、希望はバイパスを使って3、40分で行ける範囲。そしてなるべく広いところ。でもインフラが整っていなかったり浄化槽だったり、なかなか良い土地が無くて。ここはたまたま前を通りかかったら売地の看板が出ていたんです。近くにバイパスが通っているし、値段も安かった。
[奥さま]それに土地のかたちも良かった。ただ、周りが池や斜面というのが引っかかって。
[ご主人]どういう地形なのか調べ、市役所に何度も聞きに行きました。もともとローズタウンを作った京阪が造成していたので安心かなと。
ご主人はIT系のリモートワーカーで、普段は作業スペースでお仕事。目の前の緑に癒されて「そりゃあ」はかどるそう
「息子が小学生になったら、ここで勉強を」と奥さま。リビングとつながる空間なので、さりげなく見守れる
家族が日頃使っている土間収納入口。木製ドアはシンプソンのもの
キッチンとつながる土間収納は、食品を貯蔵するパントリーの役目も
アウトドア用品をまとめて収納。勝手口から直接出入りでき、片付けやすい
「正直なところ、小さな工務店さんって行くのに勇気いりました」
[奥さま]家づくりのパートナーは、何とか手が届く範囲で平屋の木の家を建ててくれるところをとインターネットで一生懸命リサーチして。見つけたのがエビナ製材でした。
[ご主人]施工事例ページで平屋が紹介されていて実績があると分かった。僕が憧れていたよろい張りの外壁も手がけている。ちょうどいいと資料請求したんです。送られてきた資料には木の板も同封されていて、杉の香りがええなと思いました。
[奥さま]無垢材の家は安くはないし、小さな工務店にいきなり行くのも勇気がいりますよね。でもエビナ製材さんは口コミで「親しみやすい」とあったし、主人に「一回訪ねてみる?」と。
「何を聞いても、答えがすぐに返ってくる…これは頼れる」
[ご主人]訪ねてみると噂通り、海老名さんはぼそぼそっとしゃべる人で、売る気があるのかなと(笑)。だけど、突っ込んだ質問をしても答えが全部すぐさま返ってくる。設計から施工までよく知っているこの人なら、スムーズに話ができるなと思いました。ハウスメーカーの営業マンとかは、詳しいことが分からなくて「聞いときます」が多かったので。
「自由度、コスト、DIYも! エビナ製材なら条件にぴったり」
[ご主人]最終的に自由度の高さで依頼すると決めました。コストも見合うなと。
[奥さま]他社さんで、手づくり、DIYがしたいと伝えたときは「保証の問題がある」「プラスこれだけお金がかかります」なんて、いい顔をしないんですね。ところが海老名さんは「どうぞどうぞ」とあっさりOKだったんです(笑)。
「希望は自然を身近に感じられる家でした」
[ご主人]僕が一番こだわったのは「自然の中」なんです。とにかく開放感をと、お風呂でもトイレでも緑が見えるように窓を多く。自然に囲まれていれば人の目線も気になりませんから。あとは外壁を木に、キッチンは土間に。家の中でも木や漆喰、鉄といった自然素材そのままの質感を大切にしたいなと考えていました。例えば木目調シートとか「~調」「~風」が嫌だったので。
廊下を省き、細かく仕切らないオープンな空間で、暮らしも気持ちものびやか。天井はあえて構造用合板を丸見えに。壁はすべてご主人が「漆喰うま~くヌレール」を塗装。中央の無垢テーブルは18年前に購入したもの
大きな窓一面に緑の光景が。外部からの視線を感じず、ゆったり過ごせる
ウッドワン製、無垢材を使ったドア
愛息を楽しませようと、ご主人が廃材と丈夫なロープで作ったブランコ
ロフト専用はしごもご主人作。ちょっとした荷物を掛けられるフック付き
寝室も床材は杉。柔らかくてほんのり温かみがあり、寝転んでも気持ちいい
ロフトは2か所に。一方は収納、他方は息子さんの秘密基地? ロフト間をつなぐ通路はご主人のハンドメイド
使うほど味が出る本革製。ネット購入
どこかレトロなアメリカンスイッチ
柱も杉。サイズは105mm×105mm
ヴィンテージ照明を扱う「パラボラ」で見つけたホーローのライト
シンプルで品があるガラスシェードのペンダントライト。ネットで購入
先に当地で暮らしていた(?)草亀2匹と同居中。名前はカメキチとケン
「私が不得意な片付けをカバーしてくれる造りに」
[奥さま]私は性格的に片付けが得意じゃなくてドタバタするので(笑)、ランドリールームとか、ものごとが一か所で完了するように作ってくださいとお願いしました。あとキッチンが土間なら掃除が楽かな、玄関まわりに上着置き場があったらその場で脱ぎ着できて散らからないなと。
「打ち合わせにCADを活用し…後悔(笑)」
[ご主人]海老名さんとの打ち合わせは、たびたびメールで。僕がCADで描いた平面図や3Dの立体図を見てもらいながらでした。
[奥さま]この時期は夫婦げんかも。私はふわっとしたイメージしか無かったので、主人はそれを何とか図面に反映しようと「どんな形? サイズは?」などと細かく聞いて詰め寄ってこられると(笑)。
[ご主人]普通はニュアンスで希望を伝えるんでしょうけど、図面を描いちゃっているから1ミリでも違っちゃいけない、修正があれば早く伝えなきゃいけない。最初は楽しく描いていたのにだんだんしんどくなって(笑)。でもほぼ図面通りにできました。
「今からでも大丈夫? 上棟後の変更も快諾してくれ感謝!」
[ご主人]海老名さんには要望を全部、好きなように言っていた気がします。棟上げのとき、勾配天井の垂木と構造用合板がそのまま見えているのが格好よくて、最初は漆喰を塗ろうと思ってたのを急遽、あらわし仕上げに変えてもらいました。
ランドリールームは壁にOSB合板を貼り、ラフな表情に。アイロン台の造り付けは叶わなかったものの、洗濯の動線が短くなって「満足です」と奥さま
洗う・干す・しまうが1か所で完結。室内干しロープやポールはご主人が設置
クラシックな2ハンドル蛇口はカクダイ、陶器シンクは木製カウンターとなじむ、TOTOのシンプルなものに
ご主人作。カウンターにするオーク材が堅くて、シンクを埋め込むのに手こずったそう
浴室の窓は強度面から見て限界ぎりぎりまで大きく。湯船に浸かりながら緑が楽しめる。葉の茂りが目隠しにも
トイレはロールカーテン付き。ペーパーホルダーは雑貨屋さんで見たものを参考に、アイアン×ウッドでDIY
ロフトの窓は家中の換気にも役立つ
丸っこい壁付け照明は「パラボラ」で
台風時に防風ネットを固定する用意も
家族で拾い集めたドングリを、庭先に植えてみると…すくすく生育中
境界ブロックの不足分はご主人が追加
「すごく楽しかった! 内壁&外壁塗装、キッチンや洗面台もDIYで」
[ご主人]家づくりで特に楽しかったのは、いろいろDIYでやらせてもらえたこと。内壁は壁紙にしたくなかったので、ほぼ一人で漆喰を塗りました。外壁もすべて自分で塗装を。大きいもので自作したのはフレームキッチンやカップボード、棚受け…とキッチンにある設えですね。洗面台も自分で作って持ち込みです。問題だったのは作る場所で、フレームキッチンは溶接しないといけない。友人のバイク屋さんに間借りして作りました。
「望みどおりのキッチンです」
[奥さま]私はキッチンが気に入っています。もともとシステムキッチンがあまり好きじゃなくて、フレームキッチンを格好いいと言っていたんですね。主人は写真を見て「作れるんじゃないの」とDIYを。土間も汚れを気にしなくていいので助かっています。
「気持ちいい〜開放感、家の外にも中にも自然がある家に」
[ご主人]この家は、どこからでも緑がぱあっと広がって見えるところがいい。キッチンで洗い物をしていても、ソファに座っていても、仕事で机に向かっていても窓の外が眺められて、気持ちのいい開放感があります。以前はよくアウトドアを楽しんでいたけど、この家だと別に出かけんでもええかと。自然を求めていかなくても、ここに自然があるんです。
遊びに来た友人たちから「ロッジみたい」「外むっちゃ見えてええな」といった反応が。家の周りは自然いっぱいながら、スーパーや学校がほど近くにあって利便性も良好
住民以外ほぼ入ってこないエリア。夏は敷地内にプールを置いて水遊びも
周囲の家とある程度離れていて、BBQを楽しんでも迷惑をかけない環境
春夏秋冬、季節それぞれの楽しみがあって、家族の思い出も増えそう
「今は親子でストレスフリー! 日々、自然体で楽しんでいます」
[奥さま]息子は元気で地声も大きく、三軒長屋に住んでいたときはご近所に気を遣ったんです。ここならそこまで気にしなくていい。今は叱られずのびのび走り回っています。おかげで親子ともストレスが無いですね。主人にも変化があって、服をその辺に脱ぎ捨てることがなく、ときどき洗濯もしてくれるように。
[ご主人]お風呂場の横にランドリールームがあって、脱いだらすぐぽいと。そういう動線を作ったので、服が散らからなくなりました。
[奥さま]冬の暖かさも前の家とは段違いです。寝室は寝るとき締めきってしまえば朝まで暖房無しでいける。以前に比べたら天国(笑)。
「実はまだまだ未完成…家づくりは終わらない!?」
[奥さま]家自体に点をつけるなら95点ぐらい。5点のマイナスはコンセントの位置です。よく考えてつけたはずが、後になってここにあったほうが良かったなと思う。でも、私のイメージをかたちにしてくれ、変化を楽しみながら老後まで過ごせる、そういう家を建てていただいたと満足しています。
[ご主人]僕も満点に近いです。ただ、まだできていないことがあって。まずは階段本棚、上のロフトとつながる階段状の本棚収納を、息子が来年小学校に入るまでに作りたいなと。海老名さんには「サグラダファミリア的」と言われたんですよ。確かに一生終わらないかも(笑)。
「こんな家を建てたい! エビナ製材はこだわりが強い方にオススメです」
[奥さま]木の家が建てたい、こんな家がいいといったイメージを固めている方は、海老名さんがいいじゃないかなと思います。
[ご主人]こだわりがある方はぜひ。家づくりが面倒くさい場合は、ハウスメーカーに行ったほうが正直楽だと思います(笑)。
ありがとうございました。
(インタビュー:茂内希保子 撮影:江原英男)
建築中の様子もご紹介します!
建築中はこんな感じでした
ご主人が完成図を3Dソフトで作成
いよいよ基礎工事がスタート
自然の中で気持ち良く大工仕事
漆喰塗りを息子さんもお手伝い
外壁の杉板にオスモカラーを2回塗り。「寒くて大変」だったそう
家の床は自然素材の蜜ロウワックスを塗って仕上げ。こちらもDIY
天板をくり抜きシンクをはめ、フレームを溶接し…キッチンはご主人の力作
大容量の土間収納は、独特の表情をみせるOSB合板で内装仕上げ
屋根材のガリバリウム鋼板を設置
この木の家の自然素材
- 玄関とキッチン[壁:漆喰、天井:漆喰]
- リビング[杉フローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉、壁:漆喰]
- 洗面所[床:杉フローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉、壁:漆喰]
- トイレ[床:杉フローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉、壁:漆喰]
- ランドリールーム[床:杉フローリング〈蜜蝋ワックス塗装〉]
- ロフト[壁:漆喰]
- 外観[外壁:杉15x145mm〈オスモカラー塗装〉]