二世帯住宅のリノベーション気持ちよく住み継げる木の家に / 京都府・B様邸
「生まれ育った家で、次の世代と暮らすことに」
[お母さま]ここはもともと私の実家です。父が昭和34年に建てた当初は、2階が女子学生さんの下宿になっていて、1階に家族5人で暮らしていたんですね。結婚して家を出ましたが、昭和60年くらいに両親との同居が決まり、2階部分を改築して私たち家族の住まいにしました。今回はそのときと同じく、親世帯が1階、息子家族が2階の二世帯住宅にと。全面建て替えだと狭くなるし、父ががんばって働いて建てたわけやから、大事に継いでいきたいという思いがありました。
B様ご家族。ご両親は2022年冬に入居。息子さんご一家は2024年春にお引越予定
「我慢してきた寒さ、狭さ、不便さを解消したい」
[お母さま]冬になると1階はいくら暖房してもなかなか暖まらなくて。特に北側の浴室や洗面、トイレの寒さがひどく、母は晩年「寒いからお風呂は嫌」と言って大変でした。浴室はタイル張りで、ひび割れからにょきにょき虫が出てきたことも…思い出すとぞっとします(笑)。増改築を繰り返したので、つなぎ目から雨漏りがする問題もありました。
[息子さん]トイレがめっちゃ狭かったんですよ。僕が座ると顔が扉に当たるくらい。その扉と洗面所の扉が重なる位置にあって、洗面所のほうが開いているとトイレから出られない(笑)。ものすごく行き来しにくかったんです。そういう不便がいっぱいありました。
「友人に紹介された工務店が、ネットで見ていた会社」
[息子さん]エビナ製材に依頼するきっかけは、友人の紹介でした。実家を改築すると話したら「良い会社があるで」と教えてくれて。友人は内装の仕事をしていて、業界内でつながりがあったんです。僕自身、以前から木の家がいいなと京都の工務店を調べていて、エビナ製材のホームページも見ていたので、一度会ってみようと話を進めてもらいました。
クリナップのシステムキッチン。背後にも大型収納があってきれいに片付き、「落ち着いて調理ができる」とお母さま。旧キッチンで長年使っていたフロントオープンの食洗機が便利だったので、新キッチンにも取り入れたそう
以前の1階には、祖父母世帯が暮らしていた頃の名残りが
もとは昭和34年築。傷んでいない柱だけを残し、総リノベーション
お母さまのご両親の寝室だった空間。今回、応接スペースに変身
生まれ変わった1階リビング。壁や床に珪藻土を塗り、床には無垢の杉板を張ってと、あたたかみのある空間に。調湿効果もくつろぎを誘う理由
寝室は以前増築された鉄筋コンクリート造の部分に。断熱材で包み、寒さを解消
階段下の空間を活かした本棚と収納。大工さんから提案されたそう
応接スペース。先代から受け継ぐ庭を、ゆったり眺められる
親世帯の玄関。扉近くにコの字型の収納も。土間モルタル仕上げ
2面採光で明るい和室。一部を桧のフローリングにし、お母さまが親族から継いだ100年以上経つピアノなどを配置
お父さまの趣味の三線がずらり
お母さまの茶道具も和室に
1階のスイッチはワイドタイプ
「柔らかな雰囲気でいて信用できる、木の家専門工務店」
[息子さん]海老名さんの第一印象は、柔らかい感じの人。こちらのいろいろな思いを受け入れてくれそうだなと思いました。
[お母さま]私も優しそうな、真面目そうな方と感じましたね。
[お父さま]約束の時間より早めに到着されていて、この人は時間を一貫して守る、信頼にたる人だろうと察しました。他の建築会社は検討する必要がなかったですね。社名がエビナ製材で、木を扱う専門。息子の友人は内装専門で、ものづくりでつながっている。そういう人が良いと言っていますから。
「木、光、風、自然の力を借りて心地よくが理想」
[お父さま]希望したのは、見栄えのよさより自然のよさがある住居。長い時間過ごす場所は、自然に生息する木をふんだんに使って、陽の光が取り入れられるように、それ以外はそこそこでと。
[お母さま]寒さの解消、それに明るく風通しよくが条件でした。以前の1階は暗い感じだったので自然の光と風を入れ、できるだけエアコンを使わずに過ごせたらいいなと。あとは使い勝手のいいキッチンに変えたい、収納スペースを増やしたいという希望もありました。
[息子さん]僕も妻も、木のシンプルな家が理想。僕が特に最優先で考えたのがリビングです。2階のもともと両親の寝室だったところは、正面に大文字が見えてめちゃくちゃいい。昼間にいる時間が少なくてもったいないなと思っていたので、ここをリビングにと。妻はキッチンにこだわっていました。
「納得いくまで打ち合わせ、現場でプロの提案も」
[息子さん]3、4年かけて話し合いました。間にコロナ禍があって緊急事態宣言の頃は見送りましたが、それ以外はひと月に1回打ち合わせを。楽しかったですね。
[お母さま]私は長年住んできたせいか、変えたらどうなるかなかなか想像できず、海老名さんや息子の話を聞いてそんなことできるんやと(笑)。迷ったのは1階にもともとあった応接室です。狭くても残したい、でもどの程度スペースが必要なのか判断がつきかねたんですね。何度か打ち合わせてリビングを少し広くし、その横にソファを置く感じにしました。
[息子さん]2階で大きく変えたのはリビング。最初はリビングダイニングの予定だったんですよ。でも海老名さんが図面を見て「狭いかもしれません」と言わはって。打ち合わせを重ね、リビング中心で考えて部屋の割合を変えました。キッチンや寝室の位置も途中で変えています。
[お父さま]海老名さんが打ち合わせに来てどんどん話を聞いてくれ、そのたびに改良してもらえる。現場の大工さんもこだわりのある人で、私がおやつを届けに行くと自分の意見を言ってくれる。それでだいぶ助かった面もあるんです。海老名さんを取り巻く大工さん、左官屋さん、電気屋さん、水道屋さん、そういうスタッフもいてできたと思います。
2階にはサンワカンパニーのシャープなスレンテスキッチンを設置。料理好きの息子さんご夫婦が使い勝手にこだわり、高さを調節したそう。デザイン性に優れ、掃除しやすいレンジフードもセット商品。食洗機はドイツのガゲナウ製
天井は梁をみせるつくりで、壁と同じく珪藻土仕上げに。木や珪藻土がもたらす柔らかな雰囲気に無機質なキッチンが意外と好相性。手前のダイニングテーブルとチェアはアクタスで入手したもの。右奥のチェアのみ、お父さまの沖縄土産
2階のこのあたりが子ども部屋に
段が高く、踏み面が狭かった階段
20年以上使った2階の旧キッチン
リビングとダイニングの床は高級感のあるタモで、蜜蝋ワックスで仕上げ。左手の窓の先には広々としたウッドデッキがあって、大文字も一望
ニッチを活かして収納力をアップ
シックな照明はパナソニック製。「型落ちで安かった」と息子さん
階段にはオーデリック製のころんとしたブラケットライトを設置
ニッチにスイッチ類を集約。2階はすべてアメリカンスイッチ
子ども部屋は足触りがよく、衝撃を吸収しやすい杉板のフローリングに。右側の窓からはちょっぴり銀閣寺のお庭が見えるそう
収納つきの小上がり。息子さんがエビナ製材の事例を「ええなと思って」採用
寝室の床も杉。奥右のパイプ&枕棚は持ち込み、左の収納は造作
2階廊下の収納。帰宅後、上着類はここで片づけてリビングへ
引き戸を開けたところ。引越前の現在は、衣類などを仮置き状態
廊下に明るい光を取りこむ窓。庭の樹木と空が見えて開放的
子世帯の玄関。奥にはベビーカーなどを入れられる土間収納が
柱の裏には造作のシューズボックス。家族はこちらから出入り予定
回り階段にして勾配を緩やかに。明かりとりの窓も設置
以前は直線的だった階段。段差が急すぎ、安全面に不安が
サンワカンパニー製の洗面設備。ボウルはカナルグランデ、タイルはモダンなウォルノットホワイト
タンクレストイレはコンパクトでスペースに余裕が。節水効果が高く、お手入れも楽だそう
大工さんによる造作で壁面収納を実現。ぴったり寸法で、思い通りの容量を設定できる
「好きな場所は…家族それぞれ、家のあちこちに」
[お母さま]私の好きな場所はキッチンですね。南側に横長の窓を作ってもらったので光が入るし、朝は台所しながら登校する小学生たちの姿が眺められます。収納もたくさんあって、すごく助かっています。
[お父さま]好きなのは1階で言うと応接室。小さな空間ですけど、髙島屋で買った上等なソファを置いて(笑)、そこに座って好きな本をぺらぺらとめくるんです。2階の息子家族のスペースもええとこですよ。
[息子さん]僕は2階のリビングとウッドデッキですね。ウッドデッキはギリギリまで広くしてもらったんです。夏は子ども用のプールを置いて遊びました。バーベキューも楽しめると思います。妻のお気に入りはやっぱり2階のキッチン。子どもたちは自分たちの部屋があるのがうれしいようで、早く引っ越してきたいと言っています(笑)。
「住まいのストレスが解消された! ほぼ満点のリノベーション」
[息子さん]僕ら家族の引っ越しは来春なので、現時点での満足度は95点です。残りの5点は住んでからですね。もしかしてこうしたら良かったが出てくるかもしれない。
[お父さま]私たち夫婦は昨冬から住んでいます。満足してますよ。ドアひとつとっても縮こまらずに出入りでき、動きが楽です。点をつけるなら99.9。0.1は何か改善点があるやろという可能性で。立地条件は決まっているし、前の家のかたちを残したいというこだわりもあった。その制約の中での99.9点は大したもんだと思います。
[お母さま]同じく99.9点です。柱を残して改築するのは大変だったでしょうが、私たちの希望を叶えてくれて非常に満足しています。以前はものでいっぱいだったけれど、収まるところに収まりまって落ち着きました。断熱材もしっかり入れてもらって、窓は二重ガラス、家があったかいですね。浴室もあたたかいんです。裸足で入っても床が冷たくないし、お湯もなかなか冷めない、もちろん虫も出てきいひん(笑)。
右手の囲いはお父さまが「大工さんに技術を教えてもらってDIYの腕が上がりました(笑)」と手作り。左のシャッターの奥はDIYの基地
2階のウッドデッキの下も作業スペースに。レンガを敷き詰めたのもお父さま
アルミデッキはテラス屋根付き。洗濯物干しに便利
リノベーション前の外観。外壁塗装は今も同じイメージに
目隠し多めで近隣の視線をカット
二世帯の玄関は並べて配置
2階南側の出窓から雨漏りが発生
以前は昭和の面影が残る外観
「エビナ製材のチームワークで叶う、自由度の高い家づくり」
[お母さま]私たちの希望を叶えるために専門的なアドバイスをし、これ無理ちがうかなあと恐る恐る言ったことも受け止めて、こうすればできるんちゃいますかといろいろ言ってくれる。かなり希望に近いところまで実現してもらえました。
[お父さま]基礎、大工、電気、水道、左官、そういう職人さんや専門家のチームワークみたいなものを感じましたね。海老名さんの人柄が、そのままチームワークの人柄となっているようで、住む人の意見を聞いて、作り側の意見も言って、それを海老名さんが束ねて設計者として一つひとつのものを提示する、海老名さんがまとめるという点では優れた棟梁になるんやろね。住む人のことを考えている人たちが集まってものづくりしてくれます。
[息子さん]海老名さんはすごく自由度が高い。父も母も言ったように、職人さんも僕らの意見に対して「一回やってみます」とすぐ取り入れてくれるし、「こうしたらもっと良いんちゃいますか」と提案もしてくれる。こだわりはる人にとったら、この自由度の高さは魅力だと思いますよ。
ありがとうございました。
(インタビュー:茂内希保子 撮影:江原英男)
この木の家の自然素材
- 玄関[床:杉]
- リビング[床:杉、壁:珪藻土、天井:珪藻土]
- 和室[床:桧、畳]
- キッチン[床:杉、壁:珪藻土]
- 洗面所[床:杉]
- トイレ[床:杉]
- 階段[タモ積層]
- リビング[床:タモ、壁:珪藻土、天井:珪藻土]
- 子ども部屋[床:杉]
- 寝室[床:杉]
- 小上がり[床:畳、壁:珪藻土、天井:珪藻土]
- キッチン[床:タモ、壁:珪藻土、天井:珪藻土]
- 洗面所[床:タモ]
- トイレ[床:杉]