細長い敷地でも広やかに光と風、庭の眺めを楽しむ家 / 京都府・H様邸
「鼻をかむ回数が減りました」
[ご主人]家族3人とも鼻がぐずつきやすく、大阪市内での賃貸マンション暮らしのときは、よくティッシュを大量に買っていました。それがこの家に越してきてふと気づけば、ティッシュペーパーを買う量が激減(笑)。木の家だからですかね? 周りの環境も違うんでしょうけど、鼻がぐずつかなくなり、かむ回数が減りました。
「この人なら任せて大丈夫、と直感して」
[ご主人]家づくりは、何かあったら即対応してくれる地元の工務店さんに頼みたかった。以前住宅雑誌を見て「いいね」と言っていたエビナ製材が、購入した土地の近くだと覚えていたんです。周辺環境を夫婦で見に来た帰り、ショールームの前をウロついてたら、ちょうど海老名さんに会って。話してみると全然売り込んでこないし誠実さがひしひし伝わってくる。この人なら任せられる、絶対良い家が建つという直感がありました。ショールームを出てすぐ、夫婦で「ここにしよう」と即決しました。
[奥さま]私は、3ナンバーの大きな車に乗っているような派手な方は嫌だったんです。海老名さんに何に乗っているか聞いたら、答えが「カブや軽トラック」と地味(笑)。自ら現場に出ている雰囲気がとても良いなと思いました。
H様ご家族は、2016年5月からこの家の住人に。娘さんも今の住まいが大のお気に入りだそう
軒をのばし板間を広くとった縁側。洗濯物を干したり遊び場にしたりと使い方自在。夏場はビニールプールを置いて水浴びも
和室の襖を開け放つと、リビングとひとつながりの空間に。リビングは天井を高くとった分、梁がきれいに見える。夫婦ともさほどこだわらなかった照明はすべてオーデリックのもので、インターネットで型落ち品を購入。コストダウンになったそう
キッチンはクリナップ。シンク前に設けて窓のおかげで風通しが良く、ふきんがすぐ乾燥。ふきん掛けはご主人の日曜大工。棚は作りつけで、その上は娘さんの写真や作品を飾るギャラリーに。作業の合間にいつでも見られてほっこり
1階の居室空間。建築前に「こんな細長い土地、どうするんだろうと思った」ご主人も、このできあがりに満足。狭さなど感じないそう
背面棚は奥さまご希望の「全部見える」収納。奥はパントリーで階段下を有効利用
「最低限のものでシンプルに、昭和感も少し」
[奥さま]コンセプトは、必要なものだけに囲まれた、ミニマルな生活ができるような家。和室や縁側で、ちょっと昭和ぽい雰囲気も足したいなと。あとは老後を考えて、手すりをつけたり段差を抑えたり。けっこう勉強もしました。例えば「ナチュラル」といっても人によって受け取り方が違うじゃないですか。口で言うだけじゃなく、本のコピーを持参するなどでイメージを共有するようにしました。
[ご主人]できるだけシンプルで飽きが来ず、毎日心安らかに居られる空間に。例えばリビングはできるだけ天井を高く、梁を出して。夫婦とも空間が広いのが好きなので。
「しょーもない質問にもしっかり答えていただきました」
[ご主人]打ち合わせは毎週。小学校以来、久々に方眼紙を買って、こういう間取りにと書いて持っていて、ブラッシュアップしてもらいました。海老名さんは何を聞いても答えてくださる。たぶん他社だと最初から「こういうもんです」と言われる、しょーもない質問にもいっぱい答えていただいた。そのやりとりを通して作りあげていく感じ、プロセスが本当に楽しかったです。
[奥さま]私、いつも訳のわからないことを言ってたと思うんですけど、海老名さんは受け止めて考えてくれる。ノーと言われたことがないですね。
「こんなところに窓?が大正解でした」
[ご主人]海老名さんから、リビングの東壁の上部に窓を設けたらと提案していただいたんです。何でこんなところに窓を? と最初は思ったけれど、住んでみると朝日の入り方がすばらしい。朝が来たー! という感じになるのが好きですね。
「キッチンに立つと、目線の先にギャラリーが」
[奥さま]システムキッチンはセットで上に棚があるけれど、〝開かずの間〟になるから取ってしまおうと。私、見えないと忘れるんですよ(笑)。空いたスペースには棚を作ってもらい、娘の写真を置くことにしました。写真ってキレイに飾っても意外と見ない。ここなら洗い物をしながら写真が目に入って和めます。
「縁側でゴロゴロ、夏はプールも」
[ご主人]リビングの南側には縁側を。洗濯物がたくさん干せるし、ゴロゴロ昼寝もできます。夏場は毎日ビニールプールを出して、娘の友だちも呼んで水遊び。体が冷えたらだだだーと走ってお風呂に入りにいって、温まったらまたプールに(笑)
和室は柱を見せる真壁スタイル。年配の方をお迎えしても喜ばれるような、昔ながらのほっと落ち着く空間に
床の間の掛け軸は名のある書家の…ではなく、娘さんの作品
床の間の天井は網代張り。幾何学の模様が洗練された印象
リビング側に面する襖の引手は、洋の雰囲気に合わせるためごくシンプルに
こちらは和室側の引手。一見普通ぽく見えて、漆塗りの「色といい深さといい」まさに用の美。奥さま厳選の高級品
リビングの梁には、横にしても強度のあるベイマツを採用
「床の間ほしさに、和室を作ろうと決めたんです」
[奥さま]最近は床の間を作る人が減っていると聞くけれど、私はほしい。だったら和室がいるなと。
[ご主人]作るならちゃんとした和室を。リビングとひと続きだけど、仕切って個室にもなるようにしたかった。床面の高さは腰掛けて庭を眺めるのにちょうどいいぐらいに。
「毎日触るところは、良いものがいい!」
[奥さま]取っ手とか手すりとか、毎日触るところは良いものがいいなと。後はコストダウンでも良いけれど、手に触れる部分は極力しっかりしたかったんです。私は金具好きなので(笑)ドアのレバーハンドルやスイッチまわり、ふすまの引き手は選びぬきました。
「真冬以外は、すぐ裸足に」
[ご主人]床は杉材。木の肌触りが良いので、よっぽど寒くなるまでは裸足でいます。
[奥さま]娘もよく裸足に。前住んでいたマンションでは自分から靴下を脱がなかったに、この家では裸足になって遊んでます。
2階のキャットウォークから見下ろした玄関。吹き抜けの大きな空間で開放感たっぷり
玄関から見上げると、存在感のある梁とすのこ床のキャットウォークが。2階窓からの光と風が通る造り
玄関を入って左側、壁面を利用した大型の納戸。扉を閉めきるとすっきり。
納戸の右半面には棚とハンガーパイプを設置。外出用の上着やかばんをイン
左半面は土間収納。雨具など汚れが気になるものも、心配せずにしまえる
玄関の右側にもエビナ製材が手がけた収納が。一角は掃除用具に合わせた寸法に
奥さま曰く「私たちの大好きな」トイレ。上部はヒノキで香りよく、芳香剤いらず。下半分は汚れを落としやすいビニールに
1階トイレのドアは、エビナ製材の作
このレバーハンドルは奥さまが「木の家に合う、安っぽくないものを」と悩んだ末、「持った感じや色が気に入って」ウエストのものを購入されたそう
洗面脱衣室は掃除がしやすいようシンプルに。棚は作り付け。ガスコンセントもあって、冬はファンヒーターであったか
動線を考えてタオル類や家族の肌着、靴下などをここに収納。さっと取り出せて便利。棚は高さが調節できる可動式
玄関から視線をまっすぐ奥へ向けると、庭の緑が見える
洗面脱衣室の天井に、洗濯物が干せるポールを設置。壁は調湿効果のある珪藻土
ウエストのスイッチプレート。珪藻土の塗り壁の色と「違和感がなくシンプル」が選んだ理由
床板は杉の無垢板。足触りが良く、あたたかみがあって、節の表情も楽しい
階段には奥さまが「大好き!」という手すりが。途中にアクセント小窓も
手すりはヒノキを使用。奥さまのご希望に添って金具を使わず、すべて木製
玄関上のキャットウォークに、娘さんやそのお友だちがドキドキワクワク、遊んで大喜び! 大人も余裕で通れる幅で、窓の掃除も楽々
キャットウォークの柵にはポールを設置。ここでも洗濯物を「干し放題です」
子ども部屋の机は作りつけ。シンプルだからこそ成長しても使い続けられそう
本棚もエビナ製材の作で棚は可動式。愛らしいカーテンはCB SOWMのもの
「いわゆる学習机って後で邪魔になっちゃうから」
[奥さま]私たちの時代って学習机をばーんと買って、後で邪魔になってたじゃないですか。それは嫌やだなと、海老名さんに相談して子ども部屋に作りつけの机を。机の高さは固定でも、成長に合わせてイスを調整すれば問題ナシです。
「キャットウォークが子どもたちに人気です」
[ご主人]玄関の吹き抜けの上はキャットウォークになっていて、娘が面白がって。遊びに来た子たちにも好評ですね。洗濯物がよく乾くので、ベランダ代わりにも使っています。
2階には奥さまがアロマセラピーのサロンとして、またご主人が仕事のミーティングなどに使える部屋が。プライベート空間と完全に分けられる造りで、外から直接出入りできるドアも設けている
「顔見知りの大工さんなら、安心して住めそうだなと」
[奥さま]家を建てている間は、作業を見に来て二人の大工さんと話すのが楽しかったです。一緒に和室に座って「ここええわー」、「いいですよね」とか言って(笑)。人が見えるのが好き、作り手が見えるのが良かった。あの二人が建ててくれたと思ったら、安心して住める感じがします。
「ガスが、炎が好きなので」
[ご主人]夫婦ともにガスもの、火を見るのが好きなので(笑)、ガスコンセントをいっぱいつけてもらいました。リビングやお風呂、和室にもつけて鍋ができるように。うちは2階に営業スペースがあるんですよ。私は大学教員なのでミーティングなどに、妻はアロマテラピストでサロンにしようという構想があって。このスペースもガス暖房です。
営業スペース直通の外階段。作り手曰く「急角度にならないように。難しかった…」
奥の棚も大容量がうれしい作りつけ。こだわるところに費用をかける分、2階のドアはパナソニック製にしてコストカット
奥さまのお気に入りはゼラニウム、ローズウッドといった優しい香りの精油。お客様は女性が多く、グレープフルーツ、ユーカリなどシンプルな香り+甘めの香り、また精神面をバランスを取ってくれる精油のブレンドを好まれるそう。
「外観のイメージは〝かぼちゃ電車〟から」
[奥さま]最初は土壁を希望していたけれど、予算の関係でできない。じゃあ土壁に近いベージュ色にと探し回っても、気に入るものがなかなか無くて。それなら全然違う色にしようと。
[ご主人]何色が良いか分からなくなってきたところで、オレンジ色を見つけたんです。僕は神奈川県出身で湘南電車、オレンジと緑のカラーリングの〝かぼちゃ電車〟に親しみがあったんです。そこで壁はオレンジ、屋根は緑にしちゃえと(笑)。
[奥さま]みかんっぽい感じもしますよね(笑)。
「お客さんがなかなか帰らない家になりました」
[奥さま]友だちが遊びに来て座ったり寝転がったり、寛いで長く居てくれる。うれしいです。
[ご主人]理由は何だか分からないけれど居たくなるんでしょうね。僕が教えているゼミ生が来ても、まったく帰らない(笑)。夕方までずっといます。
「不満?全然ない。好きなところだらけです!」
[ご主人]満足度は100点以上ですね。ここで暮らして1年ほど、こうしたら良かったという後悔が一つもないんです。使いにくさも一切感じません。日当たりも風通しも良くて快適ですね。僕は和室に座って庭を眺めるのが好き。玄関の吹き抜けの開放感もいいですね。
[奥さま]この家は全部好き! こまかいところでいうとすべて木で作ってもらった階段の手すりも、ヒノキの香りがするトイレも大好きなんです。
[ご主人]トイレの居心地が良くて、滞在時間が長くなりました(笑)。
「やっぱり『人』が良いんです」
[ご主人]エビナ製材は顔と顔をつきあわせ、人と人が作っていく感じ、自分も参加できる感じが良かった。そういう家づくりがしたい人におすすめです。やっぱり「人」ですよね。海老名さんは要望をいろいろぶつけても、必ず一緒に考えてくださる。何でも言って大丈夫ですよ。
ありがとうございました。
(インタビュー:茂内希保子 撮影:江原英男)
外壁が明るいオレンジとあって訪問客が見つけやすいというメリットも? KMEWの窯業系サイディング貼りで費用は抑えめ
この木の家の自然素材
- リビング[床:無垢のすぎフローリング〈蜜ロウワックス塗装〉(徳島産)、壁:珪藻土]
- 和室[畳:天然いぐさ、壁:珪藻土、柱:ひのき(愛媛産)、床の間天井:すぎ(網代張り)]
- 洗面所[壁:珪藻土]
- トイレ[壁:ひのき(奈良産)]
- キッチン[床:無垢のすぎフローリング〈蜜ロウワックス塗装〉(徳島産)]
- 縁側[床:ひのき(奈良産)]
- 玄関[框:無垢のひのき(奈良産)・壁:珪藻土]
- 子供部屋[床:無垢のすぎフローリング〈蜜ロウワックス塗装〉(徳島産)、壁:珪藻土]
- 寝室[床:無垢のすぎフローリング(徳島産)、壁:珪藻土]
- トイレ[壁:ひのき(奈良産)]
- サロン[無垢のすぎフローリング〈蜜ロウワックス塗装〉(徳島産)、壁:珪藻土]
- キャットウォーク[床:すぎ(徳島産)]